kawaii展(前期・後期)行ってきた

@山種美術館

柴田 是真 <墨林筆哥>
柴田 是真 <墨林筆哥>

今や海外でも認識されつつある「かわいい」という言葉。
「かわいい」には多くの意味が込められており、それこそ幼い子どもに対する慈しみだったり動物の持つ愛らしさだったり、小さくて精密なものに対するロマンだったり華やかな色のまぶしさだったり、そしてもちろん平安時代から続く”萌え”という気持ちも「かわいい」に繋がるものです。

その、「かわいい」の持つ多様性をしっかり把握して網羅しているのが「kawaii展」。まずチラシがかわいい。淡いベージュ地に蛍光ピンクの文字、切り抜きされたキャラたち。かわいい

これは楽しみになってしまうよな~!若冲の<樹花鳥獣図屏風>もくるし、裏面見たら柴田是真の<墨林筆哥(上のカエルの絵)>でしょ?「かわいすぎる○○」という言い回しは少々使い古された感もあるけれど、敢えて言おう。「かわいすぎる日本美術」がここにあると!

 

さて。少し前の話になりますが、年明けてすぐ、こちらの展覧会の特別企画として山口晃さんによる「美術感想文」なる関連イベント(=山口クラスタホイホイ トークショー)が行われました。
画伯のトークの面白さは折り紙つきなのですが、今回もかなり勉強になりました。
このトークショーが行われたのは前期で、現在は後期になってしまっていますが、通期で展示されているものについて私自身の感想も絡めてちょっとだけご紹介しますね。(テープ起こしレベルのレポはカリスマ美術ブロガーTakさんが管理人を務める”弐代目 青い日記帳”にありますよ!弐代目 青い日記帳 ”「Kawaii 日本美術」関連講演会「美術感想文」”)

狩野 常信 <七福神図>
タイトル通り七福神が描かれている巻物ですが、ところどころに金泥や金粉が撒かれています。この絵巻が秀逸なのは、この金が装飾のために撒かれているのではなく、空間を作るために撒かれている点です。
金を荒く撒いたところは反射率が低いけれど、細かく撒くと反射率が高くなり奥行きを生む作用が生まれます。
モチーフの前の一部分に撒くと奥行きがかなり変わる。絵の具でいうと白の役割として金を使っており、光を映さない時は金は暗く沈むので、また雰囲気のちがった魅力が匂い立つ。うまい人は単なる装飾でなく、遠近感を生み出すために金を使うというのは以前も聞いたお話だけれど、この絵巻はガラスケースに寝かせておいてあるため、天井からの光が入るからその効果を確認するには抜群の環境だそう。(作品を立ててしまうと反射が確認しにくい)
後期も巻替というかたちで展示してあるので、ぜひその奥行きを確認してみてください。

 

伊藤 小坡 <虫売>
山口さん曰く、子どもの大きさにたいして虫売りの女性の身長がおかしい!とのことですが・・・それに目を瞑っても、私はこの絵を推したい!!!すごい清涼感と美!!夏が涼しくなる絵です。
この虫売りさん、顔を隠してはいるが絶対美人だろうな・・・そして虫を売るという職がしっくりこない品のよさ。でもこのギャップがたまらんのよな。そしてこの屋台、山口さんの作品ぽくない??と思うのは私だけではないはずだ・・・
着物も良いのよ~!黒のグラデが紗の質感をきっちり出しています。

伊藤小坡 <虫売>
伊藤 小坡
<虫売>

 

西村 五雲 <犬>
竹内栖鳳の弟子。絵を見るとわかるけれど、栖鳳が60歳過ぎたころあたりの画風にすごく似ています。
山口さん曰く「(画風が)栖鳳すぎるが、新しいことをやりすぎない、支障と同じことを一途にやるところは歌舞伎に似ている。様式は踏襲しないとなくなってしまう。新しいものばかり作っても結局面白くはない。門松のように、”毎年同じで新しく”すれば良い」。
様式を踏襲しているというのは、ただのコピーではなく、観察したものを絵に起こすという技術の部分。あとは観察眼も継承されている。
輪郭線が残っているけれど、それが単なる”輪郭線”ではなく、輪郭線から毛の質感、その下の筋肉がどのように付いているのかまでわかる。この次に紹介する栖鳳の「鴨」でも述べますが、墨のにじみで毛を描いているのにも注目。

西村 五雲 <犬>
西村 五雲
<犬>

 

竹内 栖鳳 <鴨雛>
これは何度か見ている絵なのだけれど、見るたびにかわいらしさに頬がゆるむと同時に、栖鳳の持つ画力の凄まじさに緊張してしまう1枚。
”日本画は見て描かない。横に置いてものを描かない。筆の勢いが死ぬから”。
だからみんな写生を執拗に行う。うまい人ほど描いて描いて描きまくって、そのものの形をまるっと頭の中に叩き込む。描きたい対象のかたちが完全に自分の中に入っている。入っているから、たとえばこの雛が様々なポーズをとったとしても、自在にアウトプットできるようになっている。
それには同時に筆を使いこなせなければならない。筆の運動性と線の掌握。自分の体の一部のように。
線・濃淡・形を気にして絵を描く場合、3つを同時に気にしなければならない。
筆の使い方をマスターしたら、あとは形だけを気にすればいい。ほかは体の一部として身についているのだから。
「筆を使える前に絵を描かせるな」と、河鍋暁斎も言っている。

栖鳳はほかにも何点か展示されていますが、<緑地>は本当に名品だと思います。個人的には鴨雛より好きだな。水の色、カエルの脚、涼やかな世界の中のまどろみ。何度見てもすばらしい。

竹内 栖鳳 <鴨雛>
竹内 栖鳳
<鴨雛>

 

作者不詳 <藤袋草子絵巻>
これはとても可哀そうなお話。何が可哀そうって、”悪者”として描かれている猿たちが不憫で不憫でならないのです。
あるところにお爺さんとお婆さんがいて、もう年だからってんで彼らは野良仕事がきついわけですよ。で、猿(複数)にむかって「野良仕事代わりにやってくれたら娘を嫁にあげる」ととんでもない取引をふっかけます。その家の娘は美しかったから、猿たちは大喜びで野良仕事を行い、対価として娘を嫁にもらう。しかし、いざ嫁にやることになったらお爺とお婆はまるで被害者面して嘆くんですわ…。娘も「猿の嫁とか嫌だ」と嘆くけど、それ以前に適当な約束をした身内に嘆くべき。
一方猿たちは姫(=嫁)が飽きないように毎日芸をしたりおいしいものを採ってきたりと甲斐甲斐しい。そしてそんな猿に対して姫は感じが悪い。ここまでくると猿が本当に可哀そうなのだけれど、さらに酷いことにお爺とお婆が猟師に頼んで猿を駆逐するんだヨ……。Happy End♡みたいな感じで終わってるけどひどい話!!画伯もひどいって言ってた!!でも、こんなひどい話でも絵がかわいいのでなんだか微笑ましいのだ。かわいいってすごい。。。

作者不詳 <藤袋草子絵巻>
作者不詳 <藤袋草子絵巻>

 

画伯のお話はほかにもおもしろいものがたくさんありました。画伯を「巨匠にこれ描かれたらもう…ずるい!」と唸らせた奥村土牛の干支シリーズはわたくしの母親も絶賛。あのゆるさと、押さえるところはきっちり押さえているのがにくい!
そして画伯のトークには出てはこなかったけれど、野崎真一の<四季草花鳥獣図巻>は抱一の<四季花鳥図巻>にとても似てた。さすがは鈴木其一の弟子…。

 

 

さて、今回の目玉でもある伊藤若冲<樹花鳥獣図屏風>

伊藤 若冲 <樹花鳥獣図屏風>
伊藤 若冲 <樹花鳥獣図屏風> 右隻

千葉市美術館で行われた若冲展以来の再会でしたが、その世界は褪せることなく。
今回は小さな子どもをよく見かけましたが、この絵を観て幼稚園くらいの男の子が「テレビで見たやつだよね。これが本物なんだね」とお父さんに話しかけていたのが印象的でした。
「そうだよ、これが本物だよ。いろんな動物がたくさんいるね。これはなんていう名前かな?」
美術はみんなのもの。みんなで楽しめるもの。こうやって、小さなころから圧倒を体験するのはとても尊い。

若冲は入ってすぐにお出迎えしてくれる<伏見人形図>も、前期に来ていた<托鉢>も良かったです。さすがのレイアウト。

伊藤 若冲 <伏見人形図>
伊藤 若冲 <伏見人形図>

 

伊藤 若冲 <托鉢>
伊藤 若冲 <托鉢>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで今回は絵のほかに工芸品もきています。
紅板コーナーが熱い!!! イチオシは<青貝入金蒔絵紅筆・紅板・白粉刷毛>。
これ、お手ごろ価格で復刻しないかな・・・コスメのケースとかあまり興味がなかったけれど、これは欲しいと思える名品がたくさん並んでいてうっとりでした。

 

 

この展覧会が始まって前期を観たあたりからTwitterやFacebookで感想を書いたところ、”子どもが生まれてから美術館に行くことがなくなった”という友人や、普段は美術館にあまり行かない友人たちが「行ってきた」という感想を教えてくれました。
その中で、小さなむすめさんと一緒に観に行ったという大学時代の友人が「全体的にミルク色の雰囲気が漂うやさしい展覧会」と言っていたのを聞いて、ああ、かわいいって”やさしい”という意味もあるかもしれないな、と思いました。

いろんな”かわいい”が詰まったkawaii展。いよいよ3月2日(日)まで!

【おまけ】
目で見てたのしい・食べておいしい カフェ椿のお茶菓子は今回も魅力的。
小茂田 青樹<愛児座像>をイメージしたお菓子「春衣」をいただきました。
春衣

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