【企画展】「桜 さくら SAKURA 2018 ─美術館でお花見!─」行ってきた

@山種美術館

※写真は美術館の許可を得て撮影しています。

 

春です。

ついこの前まで寒かったのに、あっという間に花咲き誇る春。花粉症もやばいですが、桜、最高ですね!

この時期桜の蕾が膨らめばそわそわし、開花宣言を聞くやそわそわし、咲いたら咲いたで散ってしまわないかそわそわするという、そわそわしっぱなし。ほんと、「世の中に たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」ですよ。まあ、このそわそわが良いんだけどさ。

普段休みの日は極力家にいるのだけれど、この時期ばかりは桜色を求めて徘徊します。
だって、すぐ終わってしまうんだ、桜は。

そんな気持ちになるちょうど一週間前、山種美術館の企画展「桜 さくら SAKURA 2018 ─美術館でお花見!─」展に行ってきたのでした。

その頃まだ関東では桜は咲いていなかったの。むしろ薄手のコートの下にダウンとか着てた。そんなもんだから、展示室入ってびっくりしたんです。だって一面、春だったから。

会場の様子。私の写真じゃ伝わらないですが、もっとブワっと春です。

 

もちろん壁にかかっているのは絵ですよ。
でも、確実にそこには春があった。
明るくて、暖かくて、気が緩んでしまうような、そういうものが辺りを埋め尽くしていた。

おお、これはこれは……とか何とか言いながら、展示室をふらふら周回。
どこもかしこも春。

すごいわ。サブタイトルが「美術館でお花見!」なんだけど、お花見っていうか春の中に連れ込まれたっていうか、とにかくこの空間だけ桃源郷みたいなことになってました。

■第1章 名所の桜

本展は全部で3つの章と番外編(第2展示室の山種コレクションルーム)という構成。
第1章は「名所の桜」と題して、日本各地の桜の名所が。

こんなふうに地名が書いてあります。

《京都花の寺(写生)》奥村土牛
昭和43年
山種美術館蔵

なので、行ったことのある場所であれば「ああ、こうだったなあ」と思い出と重ねて楽しむことができるし、行ったことのない場所であれば「いつか行ってみたいなあ」と思いを馳せることができるのです。

この章で印象的だったのは奥村土牛石田 武
私、桜で言ったら山種の所蔵品の中で一番好きなの、石田 武かもしれない。
良いなと思った作品、全部石田 武でした。
これはぜひ本物を目で観て体験してほしい。木々と桜の湿度がブワっと伝わってくるから。

《千鳥ヶ淵》石田 武
平成17年 山種美術館蔵

京都出身の石田 武は実家が西陣織職人をやっており、自身も京都市立美術工芸学校にて図案科を専攻。このとき図案・日本画・洋画を学んではいるのだけれど、しばらくはイラストレーターを中心に博物画の仕事などもしていたのだそう。そう、もとはイラストレーターだったの。

で、独学で本格的に日本画を始めたのは なんと50歳を過ぎてから(1971年)なんだけど、そこから一気呵成というかなんというか、活躍がすごい。だって日本画を始めて2年後の73年に第2回山種美術館賞展で大賞を受賞って、まさに彗星のごとく現れた存在ですよ。

とはいえ作品はむしろ瑞々しい中にも貫禄があって、そういった落ち着きは長きにわたるキャリアで養われた自信が反映されているんじゃないかと思いました。

今回、石田 武は何点か展示されているのだけれど、彼の描いた《吉野》が本当に素晴らしくて、約1年前に開催されたこちらにも出陳されていたのですが

もう、吉野山行ったことがある人はこの絵観たら「ウワーーッ!!」ってなるから。
行ったことない人も絶対ぐっとくる。ほんっと美しい。吉野は早い時間に行くと、本当にこの、緑が深くてね、桜の花の山が湿った感じの。

で、石田 武の《吉野》の隣にあるのが奥村土牛《吉野》

《吉野》奥村土牛
昭和52年 山種美術館蔵

信じられないんだけど、これを描いた土牛88歳、なんと初・吉野山だったそうな。

「いざ制作している中(うち)に、何か荘厳の中に目頭が熱くなった。何か歴史画を描いて居る思いがした」
「華やかというよりも気高く寂しい山であることを知った。」

───と語っているんだけど、わかりみが強いのだ。
そう、吉野って、桜の名所で山を登っている時は賑やかなんだけど、離れてみるとしんみりと寂しい感じがするのよな。
山を下り、近鉄の駅へ向かいながら振り返り振り返りすると、あんなに大きいのにぽつんと独りぼっちに見える。ずっと長い間、ここでこうして、何年も春に目覚めてはそっと眠りにつくのを繰り返していたんだねと思うと、春の形容しがたい微かな切なさとか、明るいのにどこか寂し気な感じとかが、この絵の前に立つとひしひし伝わってくるわけです。

このほかに奥田元宋《奥入瀬(春)》が大迫力でしたね。というか、奥入瀬行ったことある人は「ウワー―ッ!!」ってこの絵でも思うよね。で、まだ行ったことない人は逆に、奥入瀬の地で絶対この絵を思い出すはずです。川の勢い、光の入り具合、様々な緑、全部このままだから。

そういえばこの《奥入瀬(春)》、今回照明にものすごく拘りがあったそうです。

後ろから差す光、水しぶき、瑞々しい緑、山桜、それらを一番美しく見えるライティングにするため、かなり時間をかけて設定されたそうな。
絵の前に立つとわかるけど、凄く自然なんです。今にも川の音が聞こえてきそうなくらい。
自然を人工光で演出するのって、相当難易度が高いと思います。ましてや渓谷でしょ?木々から差し込むランダムな光、それを思い描いて作品の中の光とリンクさせる。並大抵ではありません。
こちらも写真がないので、ぜひ会場で。というか、これは会場で臨場感を味わってこそです。

ほかにも土牛の《醍醐》や、東山魁夷の《春静》など、おなじみの作品から初めて観るものまでさまざま。
また、今回撮影可能な作品はこちら。4曲1双の大作です。

《大原女》土田麦僊
大正4年 山種美術館蔵

麦僊28歳の作品。のびのびした筆致とは裏腹に、「骨身をけずる思い」というほど苦労した作品だとか。
春の陽気の中、大らかな大原女たちの表情はどことなく浦沢直樹を髣髴とさせますが、足元がすごい。
《大原女》部分

この頃麦僊はルノワールやセザンヌの影響を受けていたそうですが、この、ディズニーのイメージボードのような動きを感じさせる線は斬新すぎる。このほか目の粗い紗を用いたりと、かなり工夫がみられる作品でした。

ここまででもかなりお腹いっぱいになるけれど、展示はまだまだ続きます。

 

■第2章 桜を愛でる

第2章は「桜を愛でる」として、文学や歴史において、桜とゆかりのある人物を描いた作品が登場。

イチオシは守屋多々志《聴花(式子内親王)》

《聴花(式子内親王)》守屋多々志 ※部分
昭和55年 山種美術館蔵

「はかなくも 過ぎにしかたを かぞふれば 花にもの思ふ 春ぞ経にける」

───という『新古今和歌集』におさめられた式子内親王の歌を主題に描いたもので、過ぎ去った花の心象風景を表現するために、薄墨桜と鬱金桜を選んで描いたのだそう。

離れたところから観てもハッと目を引くのだけれど、近寄ると繊細な配色に唸る。
守屋多々志は歴史画に加え、法隆寺金堂の壁画や高松塚古墳の模写も行っていたというから、史実を考察したうえで、印象的な演出を施したのでしょう。
なにより式子内親王の表情が強く心に残る。ともすれば無表情に近いこの何とも言えない表情なんだけど、こちらの視線を捕らえて離さない力がありました。

 

ところで桜というと共に描かれるのは女性というパターンが多いのですが、今回は男子もちらほら居りましてですね、菊池契月は《桜狩》にて色白の美少年を橋本雅邦は《児島高徳》という直球タイトルで渋いおじさまを描いています。

《桜狩》菊池契月
昭和9年 山種美術館蔵

ちなみに児島高徳とは『太平記』に登場する備前の武将。島流し途中の後醍醐天皇を救おうとするも失敗、桜の木に「天は帝を見捨てません!きっと助けがきますよ」的なポエムを書きつけたというシーンが雅邦によって描かれました。

《児島高徳》橋本雅邦
明治32年頃 山種美術館蔵

 

 

■第3章 桜を描く

この章にはみんな大好き渡辺省亭や、上村松園の子・上村松篁、そして「なぜこれを描こうと思った??」と相変わらず超ド級な川端龍子らによる”桜”がずらりと並びます。

《桜に雀》渡辺省亭 ※部分
明治―大正時代 山種美術館蔵
ぜひ近寄って、この潤んだお目々を観てほしい……!!
《さくら》川端龍子 
昭和時代 山種美術館蔵
視点やトリミングが可愛すぎて笑ってしまうけれど、この力強さこそ龍子なのよな

 

この章で一番好きだったのは小林古径の《桜花》。こちらお菓子にもなっていますが、これぞ桜!という作品。

《桜花》小林古径
昭和8年頃 山種美術館蔵

これを観てテンション上がって、一週間後には開花するかな?と思っていたらしたもんだから、嬉しかったな。葉が赤で、少し緑が滲んでいる。この、若い葉っぱはものすごく柔らかい。それがとてもよく伝わる繊細な作品。

そう、お菓子と言えば、菱田春草の例の絵もお菓子になっているのです!

《桜下美人図》菱田春草
明治27年 山種美術館蔵

この絵、とても好きで、《黒き猫》を描いた春草とは一風違う雰囲気なんだけど、とても良い。なんというか、『キャッツアイ』(北条司)っぽいのだ。
そしてこの

《桜下美人図》※部分

なんかもうよくわかんなくて、そもそも犬かも怪しいんだけど、かわいい。そんで一人ひとりじっくり見ていくと、全員柄物の着物を纏っているにもかかわらず、ものすごく統一感がある。

《桜下美人図》※部分
たくさんの柄が1つの画面に納められているのに全くうるさくならない奇蹟!

浮世絵などもそうだけれど、柄on柄でもおかしなコーディネートにならないのはすごいよね。
そういえば山種美術館の館長は「めいこい」こと「明治東亰恋伽」をご存じでしたね。横山大観も実装されたのはご存じかしら……。

 

 

■さらには夜桜をも堪能する

そんなわけで春爛漫な会場なのですが、第二会場のコレクションルームはどうなっているかというと、いつもより一層照明が落ちている。

今回こちらは丸ごと「夜桜」

暗がりの中、月光を浴びてぼんやりと浮かびあがるような作品たちは、まさに夜桜。とくに速水御舟の《夜桜》なんて、美女の描かれた幽霊画のように匂い立つ闇を引いていて、上品な凄みがあった。

《夜桜》速水御舟
昭和3年 山種美術館蔵

 

太陽と月、それぞれが照らす桜を堪能したところで、今回のグッズと和菓子です。

 

 

■グッズと和菓子

今回、タイトルの通りグッズも春らしさ満載で、一筆箋は季節の挨拶や、年度末で移動になってしまう人へのちょっとしたお手紙に使うと良さそうだなという柄で、ひとつ持っていると便利な気がします。

また、前回の横山大観展でも紹介しましたが、コバコ(covao)は今回もポイント高かったです。差し入れとかにしても喜ばれそう。

コバコcovacoはそれぞれ800円。奥は俵屋宗達が描いた《四季草花下絵和歌短冊帖(桜花)》(本展出品なし)、手前は小林古径の《桜花》です。

 

カフェ椿の気になるお菓子はこちら。
左下から小林古径の《桜花》をイメージした「花の色」、その上が冨田溪仙の《嵐山の春》をイメージした「花がすみ」、中央が菱田春草の《桜下美人図》をイメージした「うたげ」、右上が松岡映丘の《春光春衣》をイメージした「桜がさね」、そして右下が奥田元宋の《奥入瀬(春)》をイメージした「花春水」
毎度のことながら、よくぞ作ってくれたと唸りつつ、松岡映丘の絵は本当に明るい衣が重なっていて、「桜がさね」とはよく言ったものだなと……。お菓子のタイトルも毎回秀逸よね。

《春光春衣》松岡映丘
大正6年 山種美術館蔵
《春光春衣》※部分
全然関係ないですが、松岡映丘は髪の毛フェチだと思うんですよ。

 

現在都内は桜で満ちていますが、来週末には葉桜になってしまう木も多いはず。
お花見逃したなあという人も、もっと観ていたかったという人も、美術館の中はまだ桜が満開です。
冬の重いコートを脱いで、身軽になって室内お花見へ繰り出してはいかがでしょうか。

 

■概要

【企画展】
桜 さくら SAKURA 2018 ─美術館でお花見!─

会期:~5月6日(日) 月曜休館  ※但し、4/30(月)、5/1(火)は開館
会場:山種美術館
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

 

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