2017年に観に行った展覧会ベスト10

2017年観に行った展覧会ベスト10

あけましておめでとうございます。

結局昨年中にまとめきれなかったので三が日中に。
昨年はたくさんの展覧会に行く機会に恵まれた上に、素晴らしい展覧会が多く開催されたため迷いました。その中で再訪したものや、印象に残っているもの、思い入れのあるものを中心に上げてみました。
でも、振り返ると他にもいっぱいあるのよね・・・・・・そんなわけで、名曲「メトロポリタン美術館」を聴きながら、ベスト10に加えてほかにも印象に残った展覧会を備忘録として残しておこうと思います。
※文中の写真で会場が撮影されているものに関しては、主催の許可を得て撮影したものになります。

 

■2017年 ベスト10

 

 

●1位 ミュシャ展

(3月8日~6月5日 @国立新美術館)

ベタすぎるかもしれないけれど、ミュシャ。最高でした。
あれは鑑賞というよりも体験でしたわ。
いやあ≪スラブ叙事詩≫やっぱすごい。国立新美術館にポスターが出たころから「えっ、こんなに大きいのが来るの?」と俄かには信じ難かったのですが、本当に来たもんな。搬入作業を動画で紹介した試みも面白かったですね。
《スラブ叙事詩》の内容はその歴史に詳しくないと「なんか戦争っぽいことがあったんだろうな」としかわかりませんので、他の方も仰っている通り音声ガイドが必要となる展覧会でしたが、まあ音声ガイドを借りなかったとしても絵の迫力は凄まじいものがあり、とにかくでかいわ、ここから帰りたくないと思うくらい1点1点隅々まで素晴らしいわでえらいことになっており……何といってもファンタジー系RPGで育った人間にとっては細胞レベルで興奮する展覧会でしたこれに尽きる。そう、あらゆるファンタジー系RPGの要素がこの展覧会にはあったんですよ。《スラブ叙事詩》だけじゃない、ブロンズもそうだったし、《プラハ市民会館》の壁画だってそうでした。
構成としてもミュシャの既成のイメージになっているアールヌーヴォーを創作の一過程として紹介するに留め、アーティストとして祖国へ尽くした姿を軸としてミュシャの全体像を把握出来るようになっていたつくりが良かったです。

 

 

●2位 運慶

(9月26日~11月26日 @東京国立博物館)

春に快慶展にも行き、あちらはあちらで王道の仏像鑑賞ができてとても良かったのだけれど、運慶はなんというか、東国武士たちが運慶作品を見て「強そう!!!」と思った感動を追体験できるような作りといいますか、迫力を重視した演出が良かった。賛否両論あったみたいだけど、寺で見た時と印象が変わるのも面白かったし、何より格好良かった!格好良いって大事なことなんだなと改めて思いましたね。
良かった良かったばかりで語彙が無いですが、康慶スタートの運慶→湛慶、康弁で追っていく慶派の系譜、特に康慶を運慶の前にまとまって観ることができたのも良かった。康慶すごいよ……!あと高山寺の子犬と鹿な。特に子犬。文句なしの可愛さ。可愛いの極み。あの子が国宝になりますように……。
そんでこの展覧会の凄いところは図録にまで及ぶんですけど、ページ開いた瞬間「ヒェッ♡」てなるほど写真がヤバい。図録に萌えたのは初めてかもしれない。運慶展、最近「マッチョなくせに可愛くてピュアなキャラ」に惹かれがちな私にとって忘れていた恋心みたいなものを思い出させてくれたので、エストロゲンが大量分泌された展覧会でもありましたね。

 

 

●3位 幻の画家 不染鉄展

(7月1日~8月27日 @東京ステーションギャラリー)

「不染鉄」。まったく名前を聞いたことが無かったのですが、衝撃だった。不染鉄、めちゃくちゃ良いよ!
俯瞰と水平が交差したような独特の構図と表現、そして色、とにかく言いようもない不思議な感じがするのよ。とんでもない作家がいたもんです。
作品はもちろん、絵日記的なものも言葉が素朴でとても良かった。銭湯で小さな子どもから「マミー」をもらって心にしみたというのがぐっときた。しかし、お気に入りの女学生に手紙を頻繁に送っていたというのはやましいアレは無い、単なる世代を超えたコミュニケーションであったのだろうけれど、ちょっと不安な気持ちになってしまった……。ゴメン……。
ミュシャと運慶は迫力もあって自分の中では不動の1位・2位だったけれど、不染鉄は「美術鑑賞って楽しいなあ」としみじみ思いながら味わえた展覧会でした。ステーションギャラリーさん、この作家の展覧会を開催してくださって本当にありがとう。

 

 

●4位 並河靖之 七宝

(1月14日~4月9日 @庭園美術館)

三井記念美術館の超絶技巧展(前回の方)で感動してから、古美術店や百貨店の工芸品展の際に注目してきた遅いファンですが、これほどの美しさと築き上げた地位をもってして、没後90年にして初の回顧展というから驚き。
しかし庭園美術館で行ったというのは大当たりでしたね。なんせ内装と作品がぴったり合うの。三井記念美術館もそうだけれど、場の力を最大に使った展覧会というものは体験として至上の喜びを与えてくれる。単眼鏡の貸し出しをやってくれたのもありがたかった。毎年思ってるけど今年こそは単眼鏡買おう。

 

 

●5位 オルセーのナビ派展

(2月4日~5月21日 @三菱一号館美術館)

オルセー美術館の前館長であり、ナビ派の研究者でもあるギ・コジュヴァル氏と、氏の盟友である三菱一号館美術館の高橋朋也館長がタッグを組んだ渾身の企画展。
日本ではまだなじみの薄いナビ派だけど(私もこの展覧会がなければ各作家は知っていてもナビ派としては意識しませんでした・・・・・・)、画面構成も色彩も、これはかなり日本人好みなんじゃなかろうかと思いました。また大々的に紹介してほしい!!
三菱一号館の展覧会、本当はパリ♡グラフィック展も入れたかったが、パリ♡グラフィックを大いに楽しむことができたきっかけはナビ派展にあったということもあり、こちらを。

 

 

●6位 海北友松

(4月11日~5月21日 @京都国立博物館)

2年前トラウマになる出来事があり、実は私、電車が苦手になってしまったのです(併せてなんとなく飛行機もダメになった。遠回りになっても飛行機を移動手段に選ぶほど大好きだったのに残念)。とはいえ日常的に移動するには電車に乗らざるを得ず、ちょっとした移動ならなんとか我慢できるのだけれど、長距離はからっきし。しかし旅は大好きだから、なんとか少しずつでも克服したい・・・・・・好きなものを目的地に置くことでなんとか耐えることはできないだろうかと考えた末、目的地に掲げたのがこの海北友松展。なのでいろんな意味で思い入れがある。リハビリとか言いつつ、奈良に行って快慶展を観たり、東福寺建仁寺にも行って大満喫したのでした・・・・・・。

海北友松って建仁寺の龍の人だよね……?」というくらい知識無しだったけれど、絵もさることながら生き様がすごかった。多少盛ってる部分もあるんだろうけれど、処刑された友達の首を持って帰るために立ちはだかる猛者をぶちのめしたり、歴史上の偉人たちからやたら気に入られていたり、なんと画壇に立つようになったのは60代になってからと、原哲也の漫画かっていうくらいドラマティックな人生。
狩野元信もそうだけど、やはりこうやって単体で取り上げられてこそ、その面白さは伝わりますね。
クライマックス手前の龍づくしの部屋、暗闇からまさに龍が雲の隙間より出現してくるようで迫力満点だったし、最後の部屋の《月下渓流図屏風》はまるで日が昇る1時間前くらいの、夢なのか現実なのかわからないような幻想的な雰囲気がすばらしく、こちらも夢現のような不思議な心地のまま会場を出ることができ、後味がとても良かった。鈍器レベルの図録を久々に買ったのもこの展覧会でした。あ、あと網の絵も良かったなあ。

 

 

●7位 長沢芦雪展 京(みやこ)のエンターテイナー

 

(10月6日~11月19日 @愛知県美術館)

国宝展、仕事もそろそろ繁忙期にさしかかるというので行くべきか迷っていたところに「長沢芦雪展 音声ガイド 平田広明」という2017年最大のパワーワードが飛び込んできて、国宝展には申し訳ないんだけど、芦雪展に行くついでに国宝展にも行こうということになったのでした(結果的には、国宝展、行って良かったです)。

この平田広明さんという方は声優(俳優)さんで、有名どころで言えばジョニー・デップの吹替やワンピースのサンジなども演じていらっしゃいますが、私にとって平田さんは「TIGER & BUNNY」という作品の鏑木・T・虎徹なんですよ。声優さんが音声ガイドに抜擢されることが増えてきた昨今、どれだけ平田さんの登場を待ちわびたと思う?満を持しての登場が芦雪展とくれば、これはもう行くしかないでしょう。タイバニクラスタとしては行かない理由が見つからない。
長沢芦雪と言えば虎図襖、虎と言えばワイルドタイガー、ワイルドタイガーといえば平田広明なのですから。

もうね、私はシュテルンビルト市民になったつもりで入館しまして、「あのワイルドタイガーが日本美術の音声ガイド?バーナビーじゃなくて大丈夫かしら……?えっ?これが、タイガーなのす、すごい!!うそ、かっこいい……!」みたいな気持ちで鑑賞したので3時間半くらいかかっちゃって後の予定が大変でしたが、いや、音声ガイド2回ずつ聞いたりしたってのもあるけど物量が半端なかった
以前千葉市美術館でやった芦雪展のときも物量がすごかったんですが(千葉市美術館は毎回物量がすごい)、その時を上回ったんじゃなかろうか?
とにかく画業を振り返るに相応しい十分な内容で、〆に小さな五百羅漢を持ってくるところも遊び心があるし、無量寺再現も良かった。あの襖は空間で楽しむために描かれたのだということがしっかり伝わる内容でした。

 

 

●8位 川端龍子 ー超ド級の日本画ー

《草の実》大田区立龍子記念館蔵


(6月24日~8月20日 @山種美術館)

川端龍子、作品はいくつか知っているけれど人となりやポリシーなどはわからん……という私のような人に、川端龍子とはどんな画家だったのか、そして彼が掲げた「会場芸術」とは何たるかをそのまんま作品で示してくれためっちゃ分かりやすい展覧会でした。
《香炉峰》、《竜巻》、《鳴門》、《草の実》などなど、とにかくでかくてインパクトの強い絵を描く人なのかと思いきや、子どものころから絵が得意で(円山派っぽい犬も描いていらした)女子ウケするイラストも描けてしまう。画壇に立ち向かう熱い心を持ち、家族を大切にする。そして龍子という名は、実は子どもの頃の辛い想いから自ら付けた名前だったのだ……という盛りだくさんな内容が印象深いエピソードと共に入ってくるので、龍子ビギナーからファンの方まで楽しめた内容だったのではないでしょうか。
《爆弾散華》のエピソードとか壮絶だったもんな……。去年は龍子没後50年ということで、山種美術館での展覧会の後に太田区立龍子記念館でも特別展が開かれたことも印象深いです。

 

 

●9位 国宝

(10月3日~11月26日 @京都国立博物館)

芦雪展でも申し上げましたとおり、行くのを躊躇していた国宝展。だって国宝、結構見る機会あるしさ、東博をはじめ常設とかでも出てるじゃない?だからわざわざ混雑の中行かなくても、もっと快適な環境で拝むことはできると思うのよね。

――――と思っていたんですけど、行って良かった!
華麗に手のひらを返させてもらうけど、やっぱ国宝という扱いをされているだけあって集まったときの”圧”が凄い。そしてキャプションに「国宝」って書いてないの、なぜなら全部国宝だから……というバブリーさも面白かったですね。
あと皆が結構おしゃべりしながら鑑賞していたのも印象に残ってる。世間話じゃなくて展示されているものの話してるんだけど、さすが関西の民は基礎が違うっつーか、触れてる文化財の数が違うっつーか、会話が面白すぎる上に知識がえらいことになっていました。羨ましい。

一番良かったのが《火焔型土器》初めて観たけど凄いのなんの。あんなもん地面から出てきたら失神するわ。作った人どういう人だったんだろう?当時あのデザインは異色ではなかったのだろうか?それくらい衝撃がありました。まだ見たことがない人がいたら、ぜひ観てほしい。あれはとんでもない代物です。畏怖を感じた。
あとは《彦根屏風》。それまで特に興味なかったんだけど、一気に吸い込まれてしまったあの絵は一体何なんだろう?上手く言えないけど、絶妙というより奇妙なバランスの上に成り立っている世界なのよね。不思議な絵。本物を観ないとあの奇妙な味わい深さはちょっと伝わらない。
それと滅多に公開されない龍光院の《曜変天目》を観て、曜変天目コンプリートできたのも良かったですね。

国宝と言えば小学館から『ニッポンの国宝100』という雑誌が出ていて、1号読んだら面白かったので通読しています。


「ひとつの号で2つずつ国宝を紹介、全50号で100の国宝を紹介します」というコンセプトらしいのですが、ひとつの号で2つどころか関連する国宝を幾つも紹介しているし、「今週見ることができる国宝」とか、世界の名だたる美術品と対決させるページがあったり、分厚い雑誌じゃないのに内容が濃い。あと国宝を訪ねる旅行ガイド(おすすめお土産情報付き)も載っていたりするのだ……。
内容盛りだくさんで図版も美しいのに680円と破格だし、kindle版はさらに安く出ているので、国宝をめぐる旅に出たい人はkindleも良いかも。

8号より。東寺の立体曼荼羅とミケランジェロの《最後の審判》を見比べる。こういう思い切ったことを真面目にやっているのがとても良い。

 

 

 

●10位 アルチンボルド展

話題となったアルチンボルドメーカー。あなたの顔をアルチンボルド風に作成します。なお、私は認識されず。

(6月20日~9月24日 @国立西洋美術館)

いやあアルチンボルトのこと誤解してた。てっきりイロモノ画家だと思ってたけど、そんなことなかった。むしろ知識が豊富で機転が利いて、いろんなことに一生懸命だった。会場には下ネタ絵皿も展示されていたけどアルチンは一切下ネタやらなかったんだよ。今までごめん。でももう大丈夫よ……。
――――と思った人、たくさんいたんじゃない?私は完全にこのパターンでした。申し訳ない。
神聖ローマ帝国の歴代皇帝に寵愛された宮廷画家・アルチンボルド。博物学ブーム&芸術家擁護の時代に彼の才能がドンピシャだったことも大きいのでしょうけど、クライアントの要望を上手く汲み取るっつーか、粋な計らいができる上に博識、そして技巧に優れていたからこそ愛されたんだろうなあと思います。
レオナルド・ダ・ヴィンチと彼によるカリカチュアとの関係性も面白く、三菱一号館にて「レオナルドとミケランジェロ」展が同時期に開催されていたのもタイミングが良かった。アルチンボルド展観た後にレオミケ展行くと(又はその逆)、レオナルドの素描の癖というか流れみたいなものが掴みやすかった気がします。

 

 

■他にも良い展示がたくさんあった2017年

こんな感じで10位まで挙げてみましたが、他にも良い展示がたくさんありました。例えば……

●ソール・ライター展(Bunkamura ザ・ミュージアム)
●怖い絵(上野の森美術館)
●大英自然史博物館(国立科学博物館)
●蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭(加島美術)
●快慶(奈良国立博物館)
●ジャコメッティ展(国立新美術館)
●ベルギー奇想の系譜(Bunkamuraザ・ミュージアム)
●レオナルド×ミケランジェロ展(三菱一号館美術館)
●今様(松涛美術館)
●ヴォルス ー路上から宇宙へ(DIC川村記念美術館)

などなど……

「渡辺省亭」は2017年の4月が100回忌にあたるということもあり、都内各所で省亭作品が出されていたけれど、加島美術のこの展示は省亭人気の火付け役とも言えたのではないでしょうか。この少し前に赤坂離宮の花鳥の間で省亭と濤川惣助の作品を観ていたので余計ぐっときました。

「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭(加島美術)」
加島美術は企画が素晴らしいので今年も通いたい画廊。

 

また、「怖い絵」は、ひとつひとつの作品は目玉になるほどではないにしても(レディ・ジェーン・グレイはさておき)、絵画の中に込められた物語を読み解きながら恐怖という感情を使って想像力を働かせ、じっくりと味わいましょうという試みはとても面白かったです。

 


「ベルギー奇想の系譜」
は、内容も好きだったんだけど速水奨さんによる音声ガイドがヤバすぎたよね。耳が妊娠するってのはこういうことなんですね。特にフェリシアン・ロップスの作品を紹介するときの声なんてエロすぎてどうしようかと思った。一緒に行った友達もその場から動けなくなっていたから、今後も声優さんが音声ガイドやるときは積極的に利用していこうと心に誓いましたね。あとこの展覧会でヴァレリウス・ド・サードレールとレオン・スピリアールトを知ることができて良かったです。

「ベルギー奇想の系譜」展。速水さん、素敵な音声ガイドをありがとう。

 

「ヴォルス」は企画展もさることながら、ここの常設が大好きなので桜の季節に庭園とともに常設を楽しめたのも良かったです。そして川村記念美術館まで自転車で行ったんだよなあ。遠かったけど、それも楽しかった。今年もいろんな所へ自転車で行きたいですね。

「レオナルド×ミケランジェロ」は×が付いているからと言ってCP表記なわけではなく、対決的な意味を表しています。両者の素描をよくぞこれだけ!というほど集めてくれた展覧会。ここから傑作が生まれたんだな~とか、この人ここのフェチなんだな……というのが分かって面白かった。
そして一般的にレオナルドが人格者でミケランジェロが喧嘩っ早いというイメージなんじゃないかと思いますが(だよね?)、むしろレオナルドが若き才能あふれるミケランジェロにウザ絡みして、ミケランジェロが控えめにスルーするというのが分かりまして、思わず展示室で笑ってしまったのでした。

ミケランジェロ・ブオナローティ
《十字架を持つキリスト(ジュスティニアーニのキリスト)》
大型のミケランジェロの手による大理石彫刻の展示は日本初!

他にも面白い展覧会、常設でも良い企画のもの、ギャラリーの展示など、豊作だった2017年。2018年は去年ほど展覧会に行くことはできないかもしれないけれど、秋の上野はえらいことになりそうだし、今からとても楽しみです。

そして毎年言っているけど、今年こそはもっとちゃんとブログ書くぞ……。

今年もよろしくお願いします。

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