岐阜・愛知・京都の旅① 山口晃さんの天井画を観てきた

@高光山 清安寺

「長沢芦雪展」に行きたい。

なぜならば、Tiger & Bunnyで主人公・鏑木虎徹ことワイルドタイガーを演じた平田広明さんが音声ガイドを担当しているから。
芦雪といえば虎。《虎図襖》の解説をするワイルドタイガーの声は何が何でも聴かねばなるまい。でも芦雪展だけじゃもったいないし、どうせなら足を延ばして「国宝展」も行っておくべきか。せっかく行くなら雪舟6点揃い踏み且つ龍光院の曜変天目が出ているときに行っておきたい。それでももし時間が余るなら、他に何か見たい……。

……というわけで、「山口晃画伯の天井画(岐阜)」「長沢芦雪展(愛知)」「国宝展(京都)」へ日帰りで行ってきました。新幹線があれば結構行けるもんですね。
のんびり行くことができれば他にも寄りたいところはありましたが、時間と金銭的な都合で弾丸日帰り……。とはいえ、それぞれ駆け足になることもなく、見たいものもしっかり見ることができたので、充実度が高い。翌日が日曜なら寝ていられるし、なかなか面白かったです。

 

 

■JR東海のプランを利用しない手はない

 

「そうだ京都行こう」のコピーでお馴染み、JR東海。特に今の時期、「日帰り」「国宝展に行く」のであれば、東海ツアーズが提案するプランを使わない手はないでしょう。

 JR東海ツアーズ 
JR東海ツアーズ:国宝 京都国立博物館開館120周年記念特別展覧会 海北友松
http://www.jrtours.co.jp/kyoto_plan/kokuhou/?scid=pick-kokuhou1
国宝 京都国立博物館開館120周年記念特別展覧会 海北友松1泊、日帰りプランをご紹介。新幹線のお得なツアーから海外旅行まで取り扱うJR東海ツアーズ。おすすめツアー情報やお得な旅行プランの検索、ホテルや旅館への宿泊予約もできます。

なかでも「国宝新幹線」という、既存のダイヤの隙を縫って一本通した特別列車。これで行く手もありますね。
自分で予習するのが面倒な人や、敷居が高いと思っている方は思い切ってこれに乗るのもアリだと思います。なんせ京都に着くまで、山下先生と井浦新さんが車内アナウンスで解説してくれるし、あれだけ混む国宝展を貸し切りで鑑賞できるし。更には今や入手困難となった『ニッポンの国宝100』の創刊号もついてくるし、極めつけにトラりん(京博のマスコットキャラ)と同じ列車に乗って車内で写真撮影もできるという。トラりんと同じ新幹線に乗る機会なんて、この先生きているうちに絶対ないもんな……。

で、国宝新幹線以外にもたくさんプランがある。その中で私がオススメしたいのは京都国立博物館で特別展が開かれるとたびたび登場する“日帰り1day京都「国宝」展(首都圏発)基本プラン”。これ、以下が付いてお値段なんと20,900円から。

・東京/品川発着往復新幹線チケット(利用可能列車に限る)
・国宝展鑑賞チケット
・京都タワー展望入場券
・KYOTO TOWER SANDOお土産券(600円×2)

往復のぞみを使った場合で考えると10,390円もお得というとんでもないプラン。
今回私は途中で名古屋下車するため使わなかったのですが、よくよく考えるとこれを使って名古屋で降り、名古屋から新たに京都までの新幹線チケットを伊神切手で買った方が安く済んだなと気づいたのでした。

 

 

■山口晃画伯の天井画・《五龍圖》を観に行く

●《五龍圖》は清安寺にあり

かねてから画伯のトークショーならびに各所で話をきいていた岐阜県土岐市は高光山・清安寺にある約12メートルの天井画、《五龍圖》
なんでも画伯が泊まり込みで描かれた天井画で、観に行った人たちは口をそろえて「良かったよー!」と言うもんだから、行こう行こうと思ってはいたものの、なかなか機会を得られず。
そんな折、「名古屋に芦雪を観に行くなら、清安寺まで片道1時間かからず行けるよ」と友人からアドバイスをいただき、今しかないと行ってきました。

高光山 清安寺
※『親鸞』の挿絵をがっつり見ていた人なら、この景色に見覚えがあるはず……

清安寺さんは観光地にある寺社や法話を定期的に開催するようなお寺ではなく、あくまで檀家さんがメインのお寺。なので、拝観したい場合は事前に電話を入れた方が良いです。
法要とバッティングしてしまうこともありますので。

 

●意外と近い名古屋・そして陶芸のまちへ

10月21日土曜日。

乗りたかった新幹線が軒並みいっぱいだったため、朝6時ののぞみ1号に乗車。
この時間、東京駅はお弁当屋さんが1つしか開いていません。ホームに出ればキオスクが開いているのですが、ちょっと焦った。
名古屋までは本当にあっという間で、サンドイッチを食べてコーヒーを飲んで歯を磨いていたら着きました。はやい。

事前に伺ったところ、この日お寺では11時過ぎから法要があるとのこと。拝観は可能だけれど、ばたばたしてしまうかもしれないから、10時頃に来てくれたらゆっくり観ることができますよということで、ちょうどよい時間まで追加の朝ごはんを楽しむ。

コンパル メイチカ店のモーニング。これで550円!

エビフライサンドが有名なコンパル。モーニングは初めて食べましたが、キャベツにハム、目玉焼きが甘いソースで和えてあってうまい。オレンジジュースは、ザ・喫茶店!のオレンジジュースで満足。

 

名古屋から土岐市へは、中央本線の快速で約40分。中央本線ってここまで伸びてるのか。すごい。

さすが美濃焼の町。巨大な茶碗が駅前に。

土岐市駅から清安寺までタクシーで5分ほどですが、早く着いたのでイングレスをやりながら歩くことに。徒歩で行っても20分程度で着きます。この日は台風が近づいていたので天気が懸念されましたが、さほど雨にも降られずありがたや。

 

わたくし、裏手から行ってしまったのですが、こちらからだと織部の里公園という施設を横目に向かうことができます。国指定史跡の「元屋敷陶器窯跡」もあるし、陶芸に興味のある方は作陶体験もできるらしい。
この不思議な建物が「元屋敷陶器窯跡」。中はこんなふうになっていました。

 

●《五龍圖》の迫力は凄かった

さて清安寺。緊張しながらインターホンを押すとお寺の方が出迎えてくれます。
入ってすぐに飾ってある《五龍圖》の下絵。

これだけでも「すごい……」と感動してしまうのですが、中に入ると――――

 

ウ……ウワーーーーッッ!!!!すごい!!!!!と、思わず声が出た。

《五龍圖》 山口晃
高光山 清安寺蔵

なにこれめちゃくちゃかっこいい!!
平面なのに立体感あるし、首がすごい痛いけど見上げるのをやめられない(笑)
薄暗いのは「昔の人は電気がないから薄明かりの中で絵を観ていた。当時と似た環境で龍の姿を観てもらえれば」という画伯の想いから。そんなわけで、ほの明るい照明がそれぞれの龍をほんのり照らしており、とても雰囲気がありました。

龍が五匹いるのには理由があって、これは仏教における五色(如来の精神や智慧を表す)に由来しているそう。また、東西南北を護る龍と、さらにその中央真上から護る龍の計五匹という意味もあるとのこと。

会田誠さんもTwitterで呟いていましたが、鱗の描き分けが見事。そして雲の微かな明暗も本当にすごいです。山口さんファンじゃなくてもこれには夢中になってしまうのではないかしら……。
また、私はこの絵で初めて「龍の尻尾」を見ました。

この絵の中には隠し絵隠し文字があります。ネタバレになってしまうので、このエントリの一番下に載せておきます。自力で探すぞ!という方は、一番下までスクロールしないようにご注意。

※こちら本堂の手前にありますので、ぜひお参りもしましょう。ちょっと変わっていてお参りするのが面白いです。

 

●文化が繋がっていくということ

釘付けになっていると、ご住職の奥様がお茶を淹れてくださり、制作時の写真を見せてくださいました。
清安寺は350年以上の歴史を持つお寺。柱やお庭は当時のまま使われていたりするのですが、なんせ数百年を経ているわけですから、手入れが必要になってくる箇所も出てきます。そこで現代美術が好きなご住職は、天井を改修する際に天井画を山口晃さんに描いてはもらえまいかとミヅマアートギャラリーにお願いしたそうな。

ちょうど五木寛之氏の新聞小説『親鸞』の挿絵を担当されていた時期。山口さんは多忙だったのでダメもとでのお願いでしたが、「京都の名刹にある天井画だって当時の現代美術家が描いたもの。この先何百年と遺るであろう天井画に山口晃を選んでくださったのは、とても嬉しいことです」という三潴さんの一言で、《五龍圖》が生まれることとなりました。

それからは画伯のトークショーでも度々語られていますとおり、ひと月ほど清安寺に泊りがけで制作。その際ご家族と寝食をともにされたそうですが、それに纏わる面白い話も伺いました。

作品を描き終わり、以前の天井板との張替えを行った時のこと。
取り外した天井板の裏面に、なんと当時(約350年前)の暮らしの様子が書かれていたのだそう。これは面白いねということで、画伯にも一筆お願いしたところ、このような言葉が。


三食共ニシ 何くれ無ク世話ヲ頂クの事 

甚ダ有難き事ナレドモ、風呂の湯チト熱シ。

梅ノ頃ヨリ始メ 櫻ノ頃仕上ル

この先何百年も先の未来で再びお寺の修繕が行われ、天井画が外されたとき。
これを見た人はきっと笑ってしまうんじゃないかしら・そういったことも含めて、山口さんに描いていただいて本当に良かったと奥様は仰っていまして、良い話だ……とじんわりした次第。

ここ(赤い囲みの中)にそれが書いてあります。

この先、ずっとずっと未来の人々が見上げるであろう天井を自分と同じ時代に活躍している画家が手掛け、それをこうして観ることができるというのは、それこそ江戸時代の人気絵師を応援していた人の目線と同じ目線で美術を楽しめるということなんですよね。
そう思うと「文化が繋がっていく」ということの重みと面白みを実感することができました。

他にも画伯が描いた試し描き(というにはハイレベル)も見せてくださったりと、とても親切に対応してくださいました。裏面にはもしやアレの……?な試し描きも。

木目の多い板のため、調子を見るために試し描きをされたそう。

そして聞くのを忘れてしまったのですが、この茶托も画伯が何か描いたものだったのか……。

 

清安寺のご住職は面白いものや、皆がお寺に来てよかったと思ってくれるものを提供するのが大好きとのこと。今回は法要もあって見ることができませんでしたが、新しく奉納した仏像の間は吹き抜けとなっており、そこにプリズムを仕掛けることで仏像と檀家さんたちに虹が降り注ぐように計算されているのだとか。また訪れる際にはそちらも是非と言ってくださったので、また来るぞ……!
そんなわけでとても充実の山口晃作品巡礼の旅だったのでした。

次は富士山世界遺産センターかな。


→ワイルドタイガーが解説してくれる、魅惑の長沢芦雪展へ続く

 

 

 

 

 

【隠し文字と隠し絵】

中央の龍の首?腹?の上にある。これは、このお寺に由来する高光山
そして耳の後ろ清安寺とあります。字は写真だと見難いので、ぜひ現地で!

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