「包」の境、杉戸洋 とんぼとのりしろ、そして無印良品を行く

お盆休みの4連休の初日。特に予定を入れていなかったのですが、前日にtwitterで良さそうな展示の情報を見かけたので行くことに。

 

「包」の境 展

工芸青花企画展、「包 」の境
岡秀行氏(グラフィックデザイナー/1905-95)の著書『日本の伝統パッケージ』(美術出版社/1965)で紹介されている、日本の伝統的な「包む」という文化を現代の視点で再考した展覧会。この文化を「いわば民俗学と民芸の谷間ともいうべき部分として、これまでだれの関心も惹かなかった」ものとして研究した岡氏。今となってはその大半が姿を消し、また、それを追ってきた氏の足跡すら忘れられつつある中で、「包の文化」を現代の日本に暮らす者のセンスとアプローチで表現してみたいというのが本展のコンセプトです。

会場は工芸青花の在る、神楽坂・一水寮にて行われました。ここを訪れるのは初めて。

この一水寮、昭和前期に大工仕事に携わる職人さんたちの住まいとして建てられたもので、現在は有形文化財として登録されています。
少しわかりにくい場所にありますが、この辺の路地は趣があるので迷子になるのも苦ではない……はず。この辺りは文化財となっている建物がたくさんあるので、今度巡ってみたいと思います。

建物全体の雰囲気をしっかり残してリノベーションしてありました。

 

さて展示。会場は土間のような場所を改装したスペースでそこまで広くはないのですが、とても雰囲気が良いのだ。そして展示がまた美しい。

展示室で流れていた映像も素晴らしかった。これは岡秀行氏と親交のあった映画監督・押切隆世氏が1979年に制作した35分間の記録映画。自然素材を使った伝統的な包装技術を収録したもので、VHSとして残ってはいるそうなのですが、DVD等にはなっていないらしい。2011年に目黒区美術館で開催された「包む ―日本の伝統パッケージ」展でも放映されたとのこと。(→「包む ―日本の伝統パッケージ」展
以下はこの映像の最後に添えられた言葉ですが(聞き取りながらメモしたので間違っているところもあるかも)、とてもぐっときたのでいつか自分で読み返す用に記載。

包む行為は必ず解きほぐされていく
藁も、木も、竹も、そして土も、いつか原型を失ってこわされていく。
それは大地に還るために 大地に飲み込まれて
再生の日を静かに待ち望むために。
我々は、それを忘れてはならない。
強かに包むという行為が、あたたかさと、その執念を失わないかぎり
解きほぐされたもの、大地に飲み込まれたもののひとつひとつは
やがて再び 命の芽を吹きはじめるだろう。

はじめに”捻り”があった。
それが”包む”の原型である。



 

「杉戸 洋  とんぼ と のりしろ」 展

アルチンボルド展、《大気》と《火》が揃った姿は観ていなかったので、もう一回行こうかなと上野に向かったところ行列が。さっさと諦め、「とんぼとのりしろ」展はどうかな?と東京都美術館へ。
チラシがとても好みだったのでどんな感じかなと楽しみにしていたのですが、「すごい、素晴らしい、たまらん!」という感じではなく、じんわり「おおお……」という感動。

地下3階、吹き抜けスペースのソファに座って見渡す世界は、もやもやと存在していた心の中のわだかまりがそっと解れて、胸に風が通るようでした。このスペースに展示されていたペインティングの中に一点ものすごく良いものがあって、自分の中にある”善良な何か”が回復した気がした。
巨大な地層のように積み上げられた淡い色とりどりのタイルも美しかったです。

チケットは1枚で2回鑑賞することができます。つまり、日や時間帯を変えてもう一度観に行けてしまうのです。
これは「会場に射す光の加減で雰囲気が変わるため」とのことなんだけど、その日の気分でも見えるものの印象は変わってくるだろうから、日を変えてもう一度行ってみようと思います。そうそう、普段は使わないので見落としていたエレベーターですが、今回は天井に装飾が為されていました。

ところで展覧会タイトルにもある「とんぼ」。のりしろ、ときたらとんぼは印刷や製本で使うトンボのことかなと思ってしまうのですが、そうではなく、点と点を結んだところにできる線を意味しているそうで、その辺はこれから出来上がる図録に詳しく書いてあるのかもしれません。

 

帰路。ぼんやりしていたら乗り換え駅を過ぎて有楽町についてしまったので、そこで降りて無印良品に寄って、まだ観ていなかった「無印良品と明和電気をくらべた展」へ。

 

「無印良品と明和電気をくらべた展」

会場では明和電気の製品を試すことができます。

「道具と人間の付き合い」はどのようにして生まれたか。世にある道具は、誰がどのようにして考え、作り、使うのか。芸術を出発点とした「ナンセンス(超常識)」的視点で数々の製品を生み出す明和電気と、「わけあって、安い」というコンセプトのもと、日常で使用する基本的な道具をできるだけ安く良いもので提供する無印良品。
両者の製品の中で似ているものを例に出し、それを比べてみることで、先の問いを考えてみようという展覧会でした。

結構無理やりな比較もあったけど(笑)、会場に掲示してある土佐社長による「無印良品と明和電機の共通点」はなかなか言いえて妙でありました。

左:自動巻き時計 駅の時計・リストウォッチ(無印良品)
右:ジホッチ(明和電気)
左:文庫楽器(無印良品)
右:オタマトーン(明和電気)

 

ところで有楽町無印。久々に来ましたが、1階に野菜を含めた食材が売っていたり、本屋ができていたでびっくりした。その中に無印良品が出している「人と物」という文庫があって、柳宗悦、花森安治、小津安二郎による短編を纏めたものがそれぞれ出ているのだけれど、ふと手に取ってみた花森安治の本。戦争が終わったことについて書かれている内容があまりにもリアルでした。
リアルといっても子細な描写があるわけではなく、短い言葉で淡々と書いてあるだけなんだけれど、「ああそうか、戦争がないということはそういうことなんだ」と改めて気づかされる内容。

夜になって電気を点けることができる。
寝間着に着替えて、布団に入って眠ることができる。

当たり前のことすぎて何も考えずに行っているこれらすら、ひとたび戦争となればできなくなってしまうということ。友達と気軽に約束をして食事をすること、5000兆円欲しいと願いながら会社に行くこと、お菓子を買い込んで映画を観たり、寝っ転がって漫画を読んだりすること、今日みたいに気の向くままに美術館へ行くことなんてもっともっとできなくなってしまう。

”くらしを大事にすることが、二度と戦争を起こさない世の中をつくる”という信念を持っていた花森安治。8月という月に、そして一部の人たちの所為で緊迫することになってしまった現状に、とても大切だと思える一冊でした。つーか、ただでさえ日々生きることで精いっぱいなのに余計なことしてほしくない。多くの人はともすれば折れそうになる苦行の如き人生を「3年後に続編放送決定!」とか「2期決定!」等々の情報を糧に「なんとかそれまで生きよう」として今日まで生き延びてきたんだから、こっちの人生邪魔すんなやって思うんだよな。。。

 

そんな気持ちの中見つけたボーダーのTシャツ。
何の変哲もない普通のシャツですが、とても素敵に見えたのであわせて購入。

 

半日に渡りふらふらと歩いた日でしたが、とても充実した一日でした。
こういう落ち着いた日々が、来週も来月も、来年も、そのまた先も、ずっとずっと続きますように。

 

 

●「包」の境 展(~8/11で終了)

●杉戸洋 「とんぼ と のりしろ」
会期: 〜 10月9日(月・祝)
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
開館時間:午前9時半〜午後17時半  ※入館は閉館の30分前まで
(金曜日は午後8時まで。8月18日、25日は午後9時まで)
休館日:月曜日(ただし8月14日、9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)
公式サイト:http://www.tobikan.jp/exhibition/2017_hiroshisugito.html

●無印良品と明和電気をくらべた展
会期: 〜 8月27日(日)
会場:無印良品 有楽町店 2F  ATELIER MUJI
開館時間:午前10時〜午後21時
公式サイト:https://www.muji.com/jp/events/7108/

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