「大妖怪展」行ってきた

@江戸東京博物館
IMG_6284

ウォッチ!今何時?めちゃ楽しい展示~!ウィッスッ!
というわけで楽しみにしていた大妖怪展行ってきました。妖怪ウォッチ扱ってるってことは子ども向け?と思うなかれ。高著に幽霊画関連をいくつも抱える萬美術屋・安村敏信さん(元板橋区立美術館館長)監修のガチなやつです。
それもそのはず、学生時代に真珠庵の≪百鬼夜行絵巻(伝土佐光信)≫を観て以来、妖怪画に心を奪われたという安村さん。その後長年にわたり妖怪画に思いを馳せ、温めつづけた構想の集大成がこの展覧会というのだから気合い十分です。サブタイトルにもなっている「土偶から妖怪ウォッチまで」という言葉のとおり、最終的に行き着いた妖怪のビジュアルのルーツはなんと土偶。遮光器土偶のような異様ともいえる容姿は少なからずのちの「化け物」のイメージに影響を与えたのではないかというのが安村さんの推察です。そして4000年の時を超え、現代に息づくジバニャン(は、地縛霊なんだけども)をはじめとする妖怪たちへとその軌跡は脈として続いてきたのです。
(妖怪ウォッチを子ども向けアニメと侮るべからず。何か不都合があると妖怪の仕業だとするのは古来からの考えそのものですし、妖怪を調べて集めるという手法は、江戸時代に出版された妖怪辞典と同じスタイルなのだそう)

妖怪と聞いて我々が連想するのは水木しげる御大ですが、今回水木先生関連は1点も出ていません。そこも従来の妖怪展とは違う点だと言えるでしょう。
そしてもう一つ。妖怪のルーツを探るうえで外せない、異形のものたちが数多く描かれている「地獄絵図」。本来これらは仏教画のジャンルですが、本展覧会には全国から「六道絵」が集合しています。この展覧会のために六道絵を貸してほしいと仏閣へ相談に行くも、「妖怪展?冗談じゃない、これは仏教画であって化け物の絵じゃないんだよ!」と怒られたという安村さん(泣)。そこを何とか……とお願いしまくった結果、見事説得成功!鎌倉時代の主だったものほぼ全てを網羅されたというのだから、その執念たるや大変なもの。ですからこれは仏教美術「六道絵」の展覧会でもあるのです。

ちなみに今回の音声ガイドは井上和彦さん!井上さんと言えば『夏目友人帖』のニャンコ先生ですね。展示に夏目関連はありませんが、たっぷり35分間、落ち着いた声と時に活劇風の分かりやすく詳しい解説内容に思わず聴き入ってしまいますわよ♥

キャスティングに興奮した音声ガイド
キャスティングに興奮した音声ガイド

 

さて、展示は妖怪たちが元気に描かれている江戸時代から始まります。
まずは初公開となる葛飾北斎の≪天狗図≫がお出迎え。浮世絵で知られる北斎ですが、肉筆画もめちゃくちゃかっこいい。また、もともと文人画を描いていたけれどある日突然何かに目覚めて妖怪画を描き始めた北斎の弟子・高井鴻山による≪妖怪山水図≫もわちゃわちゃしてるわクリーチャー度が高いわで面白いです。
そして若冲の≪付喪神図≫。この日はこれの手ぬぐいを持って行っていたので嬉しかった!

伊藤若冲 <付喪神図>
伊藤若冲
<付喪神図>

 

続いて物語としての妖怪絵巻のセクションに移るのですが、ここで面白かったのが≪化物婚礼絵巻≫≪稲生物怪録絵巻≫
岡義訓による≪化物婚礼絵巻≫は文字通り化け物のBOY MEETS GIRLから始まってデキ婚するまでの様子を描いたものですが、婚姻の話を親が決め、初めて当人たちが出会った瞬間、彼女のあまりの美しさに男の化け物の方がびっくりして茶をこぼすというピュアッピュアな展開がなんとも微笑ましい。
対する≪稲生物怪録絵巻≫は実在した備後の藩士・平太郎君(16歳)のオカルト体験をもとに書かれたある意味ノンフィクション。『うしおととら』か!?ってくらい妖怪に目をつけられまくる平太郎君は次第にその異常な日々に慣れていったのか麻痺したのか、恐れるどころかガンガン化け物を倒していき、最終的にラスボスに強さを認められて木槌をもらったりします。話盛りすぎだろと思ったりもしますが、荒俣宏さんや京極夏彦さん、水木先生が関連書籍を出しており、なんと『地獄先生ぬ~べ~』にも登場するということから人気の話であることが伺えます。ピンチョスの如く突き刺さった生首たちに向ける、ゴミを見るような平太郎君の視線が冷ややかで笑えました。

 

次に妖怪大図鑑のセクションへ。みんな大好き≪針聞書≫≪姫国山海録≫はこちらです。
≪針聞書≫とは人間の体内で悪さをする虫の紹介と退治方法が載った鍼灸用の医学書のようなもの。これ、本当にかわいくてマヌケで思わず全部観たくなってしまうほど。漆原友紀さんの『蟲師』好きにはたまらない内容なんじゃないかしら。ギンコたちが封じてきたのはきっとこういう蟲なのだろうな~と、ときめくこと請け合い。
≪姫国山海録≫は中国のあやかし集『山海経』の日本版。キャプションがなんとなく読めるのが嬉しいわ、絵がこれまたすごいセンスなのが笑えるわでこちらも全部読みたいくらい。自分の近所に住んでいた妖が臭くて変な奴だったと分かったときは思わずガッカリ……。
※≪針聞書≫の詳しい説明は所蔵館である九州国立博物館のHPで閲覧できます。(こちら

≪針聞書≫
≪針聞書≫

 

続いて展示は幽霊画と錦絵(浮世絵)、版本の世界へ移ります。
安村さん曰く、幽霊と妖怪のボーダーはときとして曖昧になることがある、とのこと。私個人の意見では幽霊と妖怪は別物なのですが、言われてみると付喪神や猫又などはどちらかと言うと生まれ方が幽霊ルートなんですよね……。まあそういう話を抜きにしても、全生庵の圓朝コレクションをはじめとした幽霊画は見ごたえがあります。なかでも≪還魂香≫は「幽霊には足がない」というイメージの元ネタとなったと言われる作品の一つ。
錦絵ゾーンでは、有名な北斎の≪百物語≫や国芳の≪源頼光土蜘蛛の妖怪を斬る図≫をはじめ、ずらっと名作が展示されています。さすが錦絵、センス抜群で各キャラのキメのポーズもさることながら全体の構図が見事。当時流行した四谷怪談のビジュアルもかっこいい。版本ゾーンには百鬼夜行でおなじみの鳥山石燕による≪図画百鬼夜行≫≪今昔百鬼拾遺≫≪百器徒然袋≫の妖怪図鑑がそろっており、あらこれらは川崎市民ミュージアム所蔵のものなのか、こういう系たくさん持ってるところなのかしら?と所蔵館も気になったり。

 

その後いよいよ中世にうごめく妖怪と称して、かわいい系妖怪の代表格・付喪神のパレードであり、且つ監修者の安村さんを惹きつけた真珠庵の≪百鬼夜行絵巻(伝土佐光信)≫が登場します。
実は数年前、海洋堂から百鬼夜行ボトルキャップフィギュアがリリースされたことがあったのですが、なんとそのとき引き当てた妖怪が今回載っているではないか!!そんでもって一筆箋の図柄にもなっているではないかー!!嬉しい!!

≪百鬼夜行絵巻≫ 伝 土佐光信
≪百鬼夜行絵巻≫
伝 土佐光信
≪百鬼夜行絵巻≫ 伝 土佐光信
≪百鬼夜行絵巻≫
伝 土佐光信

そしてそして、同じセクションにある≪土蜘蛛草紙絵巻≫(東京国立博物館所蔵)!!!この絵巻に再会できた喜びよ……!!
以前東博の常設展に展示されていたのですが(東博「秋の特別公開」行ってきた)、RPG系のストーリー展開に切ないラストが待っているっていうね……源頼光と渡辺綱の冒険譚として描かれているんですけど、たぶんこれ、土蜘蛛のママが子どもを育てるために知恵を絞って変化までして人を襲っていたんじゃないかなと思うわけですよ。なんかそう思うと、頼光じゃなくてもっと優しい人が相手だったら違ったラストになっていたんじゃないかな……とかね、『うしおととら』愛読者は思ってしまうわけですよ。
※うしおととらは、ひょんなことから妖怪退治の槍を持つことになってしまった蒼月潮少年が、妖怪・とらと一緒に「白面の者」と呼ばれる九尾狐に立ち向かう感動アクション少年漫画。藤田和日郎氏による号泣必至の超名作。
で、この土蜘蛛、こういう↓顔してるんですけど

土蜘蛛
≪土蜘蛛草子絵巻≫(部分)
お腹から出てきているマシュマロみたいなのは人間の頭蓋骨。後ろにいるのは子ども(?)の土蜘蛛

これ↑と同じ部屋に来ている国宝≪辟邪絵 神虫≫。神虫は名前の通り悪いものを退治してくれる良き存在なのですが、これと土蜘蛛がどことなく似ていて、公式HPにも上下で写真が貼られていますが、これが元ネタなのかなとすら思えます。役割は全然違うのに。というか神虫、ジブリっぽくない?と思うのは私だけ……?

≪僻邪絵 神虫≫
≪僻邪絵 神虫≫(部分)
※~7/31まで

 

 

さてさて、このセクションにはあのハーレム一転大惨事でおなじみの酒呑童子(Fate/GOの方ではない)の屏風もあって、なんというか人間が退治する側の話が集まっているのですが、次のお部屋は立場が逆転、つまり現世で悪いことをした人間をこらしめる獄卒たちの働きぶりがよくわかる六道絵(地獄絵)が集結しています。

地獄絵、いろんなところで見かけますけど、結構面白いんですよね。地獄なんだけど、アレ?皆笑ってない?っていう……。今回は曼荼羅みたいな色合いの悔い改めよと言わんばかりの真面目なやつも来ていますが、相変わらず≪沸屎地獄≫とか小学生が喜びそうな下ネタ地獄もあって笑わせてくれます。絶対この地獄には落ちたくないけどな。。。

……なんて思っていると突如≪遮光器土偶≫≪みみずく土偶≫が現れて4000年前へふっ飛ばされ、うーん確かに奇妙な顔だよな、アジア・アフリカ・オセアニア周辺で見るプリミティブな祭事のお面みたいだよな……とか思っていると今度は一気に現代に戻されてジバニャンやコマさん、そして≪妖怪ウォッチ キャラクターボツ案≫が迎えてくれ、さらには井上和彦さんがホーンテッドマンションさながらのセリフでクロージングというある意味ジェットコースターのようなエピローグになって妖怪をめぐる一連の旅は幕を閉じます。
正直最後の流れはちょっと強引……なんて気がしなくもないけど、4000年という遥かなる時空の中を旅して気付いたのは、「妖怪」というものは神になったり魔になったりしながら我々の歴史と共にあり、悠久の時を経てもその奇妙な存在感は実のところそんなに変わってないのかもしれないということ。
妖怪・幽霊・地獄とオカルトキーワード満載の展覧会ですが、一切怖くないどころか、日本が更なる4000年後も彼らが存在してくれるような不思議な余白を持った国であるといいなという気持ちになりました。

 

さて、妖怪展の見どころはここで終わりではなく、ショップへ続きます。
そう、ショップがめちゃくちゃ充実しているのだ!
雰囲気良し、品ぞろえ良しの二重丸です。うっかりすると散在するのも妖怪のせいなのね、そうなのね……。とりあえずこの日はぐっと堪えて一筆箋を二冊。あとは後期のお楽しみ。
展示替え後はどんな妖怪に会えるのか。もう一度4000年の旅に出ようと思います。

百鬼夜行と姫国山海録の一筆箋。どちらもきゃわいい。
百鬼夜行(上)と姫国山海録(下)の一筆箋。どちらもかわいい。
リアルな飴細工。結構ボリュームのあるぬっぺらぼう、食べきることができるのか……
リアルな飴細工。結構ボリュームのあるぬっぺらぼう、食べきることができるのか……

 

 

大妖怪展 ―土偶から妖怪ウォッチまで―

会期:~8月28日(日) 毎週月曜休館(8/8,8/15をのぞく)
会場:東京都江戸東京博物館
時間:午前9時30分から午後5時30分(入場は閉館の30分前まで)
※7/29から金曜と土曜は午後9時まで!

 

会期

2016年7月5日(火)~8月28日(日)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です