「ゆかいな若冲・めでたい大観 ―HAPPYな日本美術―」展行ってきた

@山種美術館
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2014年の年始に山種美術館にて行われた「Kawaii日本美術」展はその名の通りのかわいい絵にあふれ我々を魅了しましたが、伊藤若冲生誕300年記念の今年は”HAPPYな日本美術”と銘打って、山種独自のセンスの良さで若冲・大観作品を中心とした吉祥アイコンたちをたっぷり用意してくれていました。
さらに今回は若冲11点のうち、山種所蔵は1点のみで他はすべて個人像。そしてなんと5点が初公開というではないか。どこの媒体にも載っていないので、正真正銘この展覧会がお初お目見えなのですって。(※写真は1/11に行われたブロガー内覧会にて、主催の許可を得て撮影しています)

会場は2部構成で作られており、第1章が「愛でたい、めでたい、HAPPYな日本美術」第2章が「HAPPYになる絵画」。第1章はとにかく吉祥アイコンが目白押し、第2章は見ているこちらも笑顔になってしまうようなユーモラスな作品が揃っていました。また、第2会場は今年の干支である「申」にちなんだ作品が展示されています。

入ってすぐに出迎えてくれるのは若冲の≪河豚と蛙の相撲図≫

≪河豚と蛙の相撲図≫ 伊藤若冲
≪河豚と蛙の相撲図≫
伊藤若冲

若冲は同じお題を用いて何パターンか作品を作るというのが多いのですが、このお題においてはこれ1点のみ。それにしても河豚と蛙って、不思議な組み合わせであります。どうもこの蛙は毒のある種類の蛙だそうで、そういや河豚も毒がある、ということは悪い人間同士のいがみ合いを風刺したものなんじゃないか……という説がこの絵にはあるそうな。若冲といえば動植彩絵のような極彩色の緻密な絵のほかに水墨画をたくさん描いていることでも知られていますが、こういった水墨画の多くは家計のために描いていたそうです。若冲、家業の青物問屋は次男に託して悠々画家人生と思われがちだけれど、寄り合いでは苦手ながらにお上対策やったりと、結構資金が必要なシーンもあったのかもしれません。
そんな若冲の気になる初出5点ですが、こちらはすべて水墨画。

≪海老図≫左上/≪亀図≫右上 ≪布袋図≫左下/≪恵比寿図≫中央下/≪大黒図≫右下 伊藤若冲
≪海老図≫左上/≪亀図≫右上
≪布袋図≫左下/≪恵比寿図≫中央下/≪大黒図≫右下
伊藤若冲
※すべて部分撮影

この亀、甲羅が筋目描きを使って書かれているのですが、なんともしぐさが愛らしい。ぜひ全景は会場でじっくり観てください。表具も対になってつくられているものもあり、細かいところまで楽しめます。そして山種美術館の特別展示の楽しみと言えば青山の「菊家」さんによる作品をモチーフにしたオリジナル和菓子。今回選べる5点のお茶菓子のうち、2点はこの若冲の初出≪恵比寿図≫、≪布袋図≫からの登場です。
私は≪恵比寿図≫からインスピレーションを得た「えびす鯛」を頂きました。華やかだし美味しい!
お茶菓子

さて若冲といえば群鶏図。もちろんこの展覧会でも見ることができます。

≪群鶏図≫ 伊藤若冲
≪群鶏図≫
伊藤若冲

一番左の雄鶏と、左から三番目、構図がとても似ています。けれどよく見ると顔も羽根もすこしずつ違う。一発勝負で描かれる水墨画において、ここまで構図を近づけて、且つそれにとらわれずにリズムを失わない力強さはさすがです。

で、今回のもう一人のスター横山大観。こちらも派手路線ではなく渋めのラインナップ。とはいえ地味なわけではなく、華やかさもきちんとあわせ持っています。≪竹≫は金屏風にせず、金を裏からあてることによって全体的にふんわりした光が内側から発光しているように見えます。それはまるで暖かい冬の午後、竹林を散策していたらやわらかな光が差し込んできたかのよう。これは写真にも印刷にも再現不可能の繊細な光です。実際に行って目の前で暖かい光を体験してほしい!

≪竹≫ 横山大観
≪竹≫(山種美術館蔵)
横山大観
※部分

さてさて若冲も大観も渋いところをついてくるのですが、かといって展示全体が渋いわけではありません。
今回の個人的イチオシは柴田是真の≪円窓鐘馗≫。

≪円窓鐘馗≫ 柴田是真
≪円窓鐘馗≫(山種美術館蔵)
柴田是真
※部分

パリっとした赤に鬼の切り抜きがたまらん。昭和アニメのオチか!ってくらいかわいい。
次いで河鍋暁斎≪五月幟図≫。これは男児が生まれたときに天に向かって「男の子を授かったぞー」というお知らせをするためのかざりだそうですが、こちらも鐘馗と邪鬼がいい味出していました。それにしても描き込み、彩色、センスがすごい。

≪五月幟図≫ 河鍋暁斎
≪五月幟図≫
河鍋暁斎

ギラギラしたものばかりではなく、小林古径の≪不尽≫のふんわりした素晴らしさも魅力です。Takさん曰く「カヌレみたい」とのことですが、まさにカヌレ富士。この形に合った絶妙な色彩もリラックスさせる力をもっていました。

≪不尽≫ 小林古径
≪不尽≫(山種美術館蔵)
小林古径

その他ディズニー映画「アラジン」に出てくるジャファーに似ている≪寿老≫(下村観山)、ひとりひとりにスポットライトが当たるようマニアックな照明になっていますヨという狩野一信の≪七福神図≫、一信は≪布袋唐子図≫も良かったです。独特の表情だけれど、この人たちホント楽しそうだな・悩みとかないんだろうな……と羨ましい気持ちにさせられます。

≪布袋唐子図≫ 狩野一信
≪布袋唐子図≫
狩野一信

川端龍子≪鶴鼎図≫は、3羽の鶴が「鼎」という字に似とるやろ?ということなのですが、なかなかどうして西洋美術のモチーフのひとつでもある「三美神」のようにも見えました。
そうそう、山種美術館の小さな人気者・柴田是真≪墨林筆哥≫の漆で描かれた蛙ちゃんも琵琶を弾いて気持ち良さそうに歌っていましたよ。また、中村芳中≪万歳図≫はボケとツッコミの元祖を描いた絵。”万歳とは扇を持っておめでたい詞を述べる太夫と、太鼓を打って合いの手を入れる才蔵が滑稽なやり取りをする芸能で、正月に家々の門口で行われる祝福芸として人気を博した”とのこと。まさに笑う門には福来たる、でした。

≪墨林筆哥≫ 柴田是真
≪墨林筆哥≫(山種美術館蔵)
柴田是真
≪万歳図≫ 中村芳中
≪万歳図≫
中村芳中
※部分

 

 

この日は偶然、山種美術館を設計した日本設計チーフ・アーキテクトの山下博満さんと、照明を担当されたStudioREGALO代表・尾崎文雄さんがいらしており、天井とケースについてのお話を伺うことができました。
山種美術館の天井を見ると、白と黒のボーダーになっているのが分かります。これは外壁の縞模様に倣ってデザインされたもので、且つ黒の部分は中に照明器具を収められるようになっており、極力作品以外のものが鑑賞者の目につかないように工夫されているのだとか。
また、展示ケースを覗き込むとわかるのですが、通常ケースの中で見えてしまう照明器具(蛍光灯など)。山種ではどんなに覗き込んでも見えないようになっています。これもまた、作品に集中して観てもらえるようにと工夫されたものだそうです。
特に日本画の屏風絵は、本来であればそのまま部屋に置かれ、窓から入る光がレフ板のように畳に反射して絵画に当たって奥行きが生まれるよう計算して描かれています。そういった自然光による作用を損なわせないよう、そして鑑賞者と絵の邪魔をしないよう、実は細かい計算がそこかしこに施されているのだということを知りました。
作品を堪能した後は、そういった”造り”に目を向けて展示室を見てみるのも面白いかもしれません。

 

おめでたいモチーフがたくさんの展覧会。あやかって2016年はHAPPYにすごせますように!
そうそう、山種でやるならもちろん≪伏見人形図≫はいますよね・・・・・・?という方も心配なさらず。ちゃんと出品されていました。

≪伏見人形図≫ 伊藤若冲
≪伏見人形図≫(山種美術館蔵)
伊藤若冲
※部分

【特別展】伊藤若冲 生誕300年記念
ゆかいな若冲・めでたい大観 ―HAPPYな日本美術―
会場:山種美術館
会期:~3月6日(日)※月曜休館
時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

≪猿曳≫ 小林古径 第二会場の猿尽くしも観ていてたのしい!
≪猿曳≫(山種美術館蔵)
小林古径
第二会場の猿尽くしも観ていてたのしい!

 

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