「画鬼暁斎」河鍋暁斎展いってきた

@三菱一号館美術館

鮮やかなピンクにリアルな顔の猫又と美女がほほ笑み、「狂ってたのは、俺か、時代か?」のコピーが目に飛び込む、とびきりかっこいいチラシを目にしたときから楽しみだった暁斎展。
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暁斎といえば高値をつけた鴉の絵と幽霊画の印象が強く、他にどういったものを描いているのかよく知らなかったものですから、以前『日本美術全集』の出版記念トークショーで井浦新さんが「絵師が出てくる映画を撮るなら、ぼくは河鍋暁斎を演じたい」と仰った時に「あら意外」なんて思ったりしたのですが、なるほどこの展覧会観たら暁斎めちゃくちゃかっこいいもの、暁斎役やりたくなるの、わかります。一時は”狂斎”と名乗っていたことからかイロモノ絵師みたいに思われがちだけれど、6歳で国芳に入門し、その後がっつり狩野派で学んだ正統派。でもユルくて面白い絵もサラサラ描けちゃう、なんなら笑えるR18もいけますよ、なオールラウンダー。今回は三菱一号館を設計したジョサイア・コンドルが絵の師と仰いだ暁斎というポジションが柱の構成となっており、彼らの師弟関係もほほ笑ましく1粒で2度美味しい展覧会でした。(公式HPがまたかっこいいのです)

前・後期でいくつか展示替えが行われ、前期があまりにも良かったことから、後期も必ず行こうと思っていたところにブロガー内覧会の情報が。運良く抽選に当たることができたので、行ってまいりました。(※写真は主催者の許可を得て撮影しています)

 

さて画鬼暁斎展。三菱一号館美術館開館5周年に際し、なにか記念碑的な展覧会をと考えたところ、この建物を建築したコンドルの「日本の近代建築の父」とは別の顔を紹介したいというところからスタートした企画だそう。当時お雇い外国人として来日していたコンドル。日本文化に大変興味を持ち、自ら日本画を学ぼうと師に選んだのが暁斎でした。当時活躍していた絵師はほかにも狩野芳崖らがいましたが、絵画の最高賞をゲットする正統派でありつつユーモア溢れる戯画や浮世絵もこなすという、大衆一番人気の暁斎に惚れこんで弟子入りをしたそうです。オールラウンダ―であれば幅広く学ぶこともできますものね。

実はこの部屋、まるっとコンドルが持っていた暁斎の絵が展示されているのです。
実はこの部屋、まるっとコンドルが持っていた暁斎の絵が展示されているのです

「暁英」というのはコンドルの雅号。狩野派は師匠の名前から一字もらうことが多いのですが、驚くべきは雅号(=免許皆伝)を取得した年月の速さ。なんと2年というからびっくりです。しかし、そう言われても違和感がないほどコンドルの絵はめちゃくちゃ上手い。

左:<雪中鷹図> 右:<百舌図> ジョサイア・コンドル
左:<雪中鷹図> 右:<百舌図>
ジョサイア・コンドル

絵もさることながら、コンドルの手帳はスクラップと見紛うばかりの仔細なメモから成り立っており、かなり本気で日本文化を学んでいる様子がうかがえます。
また、コンドルは暁斎が明治3年から亡くなるひと月前まで毎日書いていた日記にも頻繁に出てきます。あまりに頻繁に登場するので顔を描くのが面倒くさい!というわけで、ハンコが作られていました(笑

<暁斎絵日記>より、”コンデエール”ことジョサイア・コンドル氏
<暁斎絵日記>より、”コンデエール”ことジョサイア・コンドル氏

そうそう、ハンコと言えば、暁斎の落款にはとても面白いエピソードが。会場内のカラスの絵を見ると、あるお決まりの落款を見つけることができます。それはカラスが向かい合う「萬國飛」と呼ばれるもの。
第二回内国勧業博覧会の絵画部門において最高賞を受賞したカラスの絵に暁斎が100円という値段をつけ、カラス一羽に100円は高すぎるとブーブー言われるも「これはこのカラスの値段じゃなくて、今までの研鑽修行への対価だから、嫌なら買わなくていいよ」とバッサリやったのは有名な話ですが、そのエピソードを聞いて「よし気に入った!」と飴の榮太樓總本鋪が購入。それをきっかけに我も我もと国内外から注文が殺到し、自分の描いたカラスがいろんなところに羽ばたいていくよ!という意味を込めて「萬國飛」としたのだそうな。なのでカラスの絵にはこの落款が捺されています。他にも暁斎の落款は可愛かったり不思議だったりするものが多いです。

「萬國飛」は左下
「萬國飛」は左下

ちなみに百円鴉こと<枯木寒鴉図>も通期で来ています。山口晃画伯が賞賛した枝。ひと筆で描かれているにもかかわらず、掠れが効果的に使われており、みごとに立体感を表現しています。

河鍋暁斎
河鍋暁斎
<枯木寒鴉図>

 

9歳のころ、河原に落ちていた首を拾って模写するために持って帰ったという逸話は良く知られていますが、筆のかすれ具合で立体感を出すほどの技術を持っている暁斎ですから、幽霊画や生首などホラー系も迫力満載。ですが、そういった緊張感とは離れた可愛い絵もまた、彼の魅力だったりします。おそらく大衆から人気があったのは、そういったギャップが大きい人だったからではないでしょうか。

 

 川鍋暁斎
<放屁合戦図>
川鍋暁斎
 河鍋暁斎
<書画展覧余興之図>
河鍋暁斎

下ネタ全開のコロコロコミック的な絵から、人々の表情が豊かな微笑ましい絵、そして「むちゃくちゃだろww」と笑ってしまう18禁春画。

 河鍋暁斎
<大井山図>
河鍋暁斎

忘れてはならない美人画も、個性的な目線で描かれています。

 河鍋暁斎
<閻魔と地獄太夫図>
河鍋暁斎
 河鍋暁斎
<美人観蛙戯図>
河鍋暁斎

常であればその恐ろしい形相で他を怯ませる閻魔大王ですが、<閻魔と地獄太夫図>では鏡に映し出された地獄太夫に思わず「お!」と興味を示す可愛らしい様子で描かれており、『鬼灯の冷徹』を連想せずにはおれません。また、<美人観蛙戯図>はどこか白昼夢的な世界。髪はきちんと結いつつも、どこかしどけない雰囲気の美女が、軒下で相撲をとる蛙たちを眺めています。この、鳥獣戯画を思わせる古典的なモチーフと、今までの美人画にはなかった斬新なポーズの妙が暁斎ならではの作風だったのでしょう。良く見ると、しっかり描きこまれているところと、葉や蔦などさらさらと描かれているところのバランスも素晴らしかったりします。

こうして見ると、「風景画はあまりないから、もしかしたら苦手だったのかな」と思われてしまうかもしれません。実際に飯島半十郎の『河鍋暁斎翁伝』には「(暁斎の)山水は僧雪舟に拠ると雖も、其の長ずる所にあらざるなり。故に描くこと稀なり」と書かれています。しかし、実際展示されている山水画を観ると、伝統的な技法をきっちり押さえたレベルの高いものだということが分かります。館内のキャプションには「彼(暁斎)に対する注文が戯画や人物・動物を中心とするジャンルに偏っており、山水を手掛ける余地が少なかったと考えるべきだろう。」と書かれていましたが、確かに他のジャンルの方が暁斎らしくて「どうせ注文するなら……」と偏ってしまったのかもしれません。

 河鍋暁斎
<秋冬山水図>
河鍋暁斎

 

他にも緻密に描かれた猛禽類や鯉、一風変わった迫力ある風神雷神、膝がセクシー過ぎて見とれてしまう仙人の絵など、暁斎の魅力が余すことなく展示されています。本当に多才だし、何より上手い。観ていてこんなに楽しくなる日本画展は久しぶりでした。
その中で、妖怪好きとしては外せなかったのがこちら。

 河鍋暁斎
<妖怪図屏風>
河鍋暁斎

付喪神(九十九神)が描かれているこちらの屏風ですが、鳥山明調のキャラ(矢印)がいる……!漫画のルーツは日本画にあるとか浮世絵にあるとかそういう話は食傷気味ではありますが、日本人はこういうキャラに弱いというDNAを改めて確認した次第であります。

 

大満足の暁斎展、連日満員御礼とのことですが、人手に怯まず、ぜひ観に行ってほしいオススメの展覧会でした。

 河鍋暁斎
<惺々狂斎画帖>
河鍋暁斎

みんな大好き化け猫ちゃんも、もちろんいます♡

 

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